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ぼくの世界は暗かった。
じめじめして、べとべとして。
なにもかもがぼくの足に絡みついてくる。
一人でいるとどす黒い気持ちが邪魔をして、なにも、なにもかもがどうでもよくなってしまうのだ。
———だから。
だから、ぼくは今日も彼女に会いに行く。
ふわふわ、ゆらゆら、ゆったりとした時間が流れるあの場所へ。
ふわふわ、きらきら、きらめくようなあの場所へ。
きみの、その透き通るような肌。
水に揺蕩いながらウェーブを描くきみの髪。
水槽の光を反射したきみの瞳は、宝石のように瑞々しく輝いている。
きみの着ている真っ白な服には、幸せを象徴する四葉の模様が浮かんでいて。
その模様までもが愛おしくて、愛おしくて。
———とても、狂ってしまいそうだ。
きみのそばにいると、ぼくもリラックスできる。
何か会話をするわけでもなく、ただきみを見つめているだけで穏やかな気持ちになれる。
きみのそばだけが、ぼくがぼくのままでいることを許された場所だ。
水の流れのように気まぐれなきみは、いつもぼくを翻弄する。
ある時は、ぼくに興味のないふりをしてみたり。
ある時は、ぼくに会えたことを喜んで、溢れんばかりの笑顔を向けてくる。
そして最後には、蠱惑的な微笑みをたたえているのだ。
そんなイジワルなきみさえ、ぼくにとっての幸せだ。
————もうすぐきみに会えるね。
大迫力の水槽も、水の下をくぐるトンネルも、全て通り抜けて。
暗い、暗い、通路の奥に辿り着く。
「———今日も、きれいだ」