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他に人のいない夜道。
私の足音だけが、こつこつと響いている。

———少し、嫌な感じ。
通る道は同じはずなのに、日が落ちるだけでガラリと印象が変わる。
私は背後になんとなく滲む『嫌な予感』に気を取られながら、早足で前に進んでいく。



コツ、コツ。コツ、コツ。
ふっと、響いている足音が二つに増えた。
私はそろり、と後ろを振り返る。


後ろを歩いていたのは、見覚えのありすぎる顔だった。
私は足を緩め、その人に並ぶ。

「お兄ちゃん!帰ってくるならそう言ってよ!」
私は、今年遠くの大学に入学し、家を出て行った兄にそう話しかけた。
兄が一緒に帰ってくれるなら、もう一安心だ。
私は密かに胸を撫で下ろし、兄の言葉を待つ。

「………ごめんごめん、ちょっとこっちで調べたいことがあってさ」
「ほんのちょっとだけだったから、日帰りであっちに戻るつもりだったんだ」
兄が頭をかきながら、そう弁解する。

「そうなんだ。お母さんにはもう連絡した?」
「してないなら、もしかしたらお兄ちゃんの今日のご飯はないかもよ?」
兄を揶揄うように見上げると、少し驚いた顔をする。

「うわ、しまったな。晩飯のことは考えてなかった」
兄は少し考えこむと、帰り道とはスッと別方向に指を刺した。

「ちょっとコンビニに寄ってっていいか?」
自分の分の晩ご飯を買うということなのだろうか。
別に断る理由もないので、私は兄についていくことにした。


コツ、コツ。こつ、こつ。
私たち以外いない道で、二人分の足音が響く。


コツ、コツ。こつ、こつ。
こつ、こつ。コツ、コツ。

コツ、コツ。こつ、こつ。
こつ、こつ。コツ、コツ。





———何かが、おかしい気がする。


「ねぇお兄ちゃん」


「こっちには、コンビニはないよね?」
私たちが向かっている方向には、確か——————

森しか、ないはずだ。
しかも、かなり深い森で。


「………そう、かもな」
微かな声で肯定が返ってくる。
ゾッと悪寒が走る。

———この人は、誰?


「ねぇお前さ」

“兄”は私にふっと笑いかけた。
目の前の鬱蒼とした森を指差し、“ソレ”は私に告げる。


「俺の妹はさ」




「————5年前、あの森で死んでるんだよ」

『帰郷』