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鯉が好きかどうか訊かれたら、確かに私は好きだと答えるだろう。
水の中のあの華やかな色の生き物を見ていると、少し晴れやかな気分になる。
1匹1匹違う模様を観察して、「あ、あの子好きだな」とか、「あの子顔にハートマークある」とか、
お気に入りの子を探すのも楽しい。
もちろん餌やりのできる池でパンを撒くと、バシャバシャと取り合う姿がなかなか滑稽でみにk———いや、なんでもない。

———まぁ、だからと言って。
————だからと言って。
「一体何なのよーーーーーーっ!!!!!」
周りを見渡せば、鯉、コイ、こい!
私という人間以外、みんな鯉なのだ。しかもでかい。人間と同じくらいの大きさだ。
何を言っているかわからないと思う。大丈夫、私も分からない。

———よし、状況を整理しよう。
———まず、なんでこうなったんだっけ・・・?



確か、たまたま立ち寄った池が、鯉に餌やりの出来るところだったのだ。
いつものように近くの露店で餌用の麩を買い、池に向かってぶん投げていた。
それはもう、犬にフリスビーをとってこーい!ってする飼い主のように。
あっちでバシャバシャ、こっちでバシャバシャと繰り広げられる大乱闘に愉悦を感じていると、
でっかい錦鯉が悠々と泳いできたのだ。

———お前も餌が欲しいのか?
そう思った私は、袋の中の麩を取り出す。
すると。

「おい、足りないぞ」
「えっ」
「だから、その量は足りないぞ。もっとよこせ」

唐突に声が聞こえた。
驚いてキョロキョロしている私に、声の主はさらに話しかけてくる。

が。
今日は生憎の曇り空。いかにも「もうすぐ雨が降ります」といった天気だ。
池の周りに私以外の人はいない。

———まさか。
ハッと池の方を向くと、錦鯉が大きな口をパクパクと開けていた。

「もっと、よこせ」

そう言うと、でっかい錦鯉はさらに大きくなって襲いかかってきた!


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
私はなすすべもなく鯉に飲み込まれる。
こうしてこの訳も分からない世界に来てしまったのだ。

————いや、意味分からなすぎでしょ!!
———夢か!?夢なのか!?!?


1人でジタバタしていたら、周りの鯉たちに変な生き物を見る目で睨まれていた。
———いや変な生き物はそっちですけど!?
———なんで尻尾で立って二足歩行(?)してんだよ!!


「道をあけろ!こっちに鯉外生物がいると通報があった!」
「うわぁ!ニンゲンバスターだ!ニンゲンバスターが来たぞ!」
「みんな道をあけろー!」
———えっ、待って、ニンゲンバスター!?なにそれ!?
私が慌てている間に鯉たちが次々と脇に逃げ、ニンゲンバスター(?)との一本道ができてしまった。

「お前だな!よし、捕縛する!」
そうして、あれよあれよという間に私は縄でぐるぐる巻きにされてしまったのだ。
やっぱり鯉はすごく生臭かった。


ニンゲンバスター(?)なる鯉に引き連れられて来たのは、すごく豪奢な和風のお城だった。
「殿!通報にあった鯉外生物を捕らえて参りました!」
恭しく声をかけられた鯉を見ると———

「あーーーーーっ!!!あの時の!!!!!!」
なんと、私を飲み込んだ錦鯉だったのだ!

「活きのいい獲物が取れたではないか。今日の夕餉が楽しみだ」
私の絶叫でうるさそうに顔を顰めながら、早く行けと言わんばかりにヒレをふる。

「はっ、今から仕込みますゆえ!」
「えっ、何!?食べられるの!?なんで!?!?いや、いやああああああ!!!!!!!」
私はまたドナドナと連れて行かれる。
殿様のようにふんぞりかえる錦鯉に腕を伸ばす。まぁ、縛られているので心の中でだが。
それでも力いっぱい、腕を伸ばして、伸ばして・・・・・!



ハッと気がついたら、見知った天井が見えた。

『餌』