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———暑い。
天気がいいからって、日中から散歩をしようと思ったのがいけなかった。
滅多に通らない道を歩きながら、早々に後悔をし始める。


———あ、この公園。
ちょっとしたビル群を抜け、少しひらけた場所に出た。
———確か日陰があったはず。
ジリジリと照りつける太陽から逃れるように、池のある公園に足を踏み入れる。
池の周りの遊歩道を少し歩くと、立派な藤棚を見つけた。木製のベンチもある。
少し休憩しようと思い、ベンチに腰を下ろした。


水面が煌めいている。
遠くから鳥の鳴き声が聞こえる。
藤の下でじっとしていると、涼しい風が身体の熱を攫っていく。
髪が風に巻き上げられないように押さえながら、ふう、と息を吐いた。


しばらく水面を眺めていたら、制服の女子が2人、藤の下に入ってきた。
「あっつーい!」
「今日やばいよねぇ!」
そう口々に言いながら服をバタバタと扇ぐ。
白と水色のコントラストが爽やかなセーラー服だ。
「ヤバい、早く帰らないとママに怒られるんだけど!」
「待って、水だけ飲ませて」
はやくはやくと急かす少女の横で、もう1人の少女が鞄から水筒を引っ張り出す。
———いい飲みっぷり。
「ぷはっ」
少女が水筒から口を離す。
「先行くよ!」
「ま、待ってよ!」
賑やかな会話を引き連れ、2人の少女は嵐のように立ち去っていった。


鳥の鳴き声に耳を傾けていると、今度は真新しいスーツの女性が入ってきた。
焦ったようにベンチに座り、パンプスを脱ぐ。
「やっぱり」という表情とともに今度はバッグを漁る。
中から出てきたシンプルなポーチからカチャカチャと音が聞こえてきた。
目当てのものを見つけたのか、音が止み、可愛らしい絆創膏が出てくる。
踵に絆創膏を貼り、パンプスを履き直すと、ふらふらと藤の下から出ていった。
———お疲れ様。
心の中でそう声をかける。


私もそろそろ帰るべきだろうか。ゆっくりと腰をあげる。
藤棚の下から出て振り返ると、大きな犬を連れたお爺さんがベンチに腰掛けるのが見えた。

『避暑』